月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
「さっきの歌―、〝半月〟という題なの?」
光王は黙って頷き、重い息を吐き出す。
「俺が望み叶って、お袋に添い寝して貰えるのは、昼間、お袋が客を取らない短い間に取る仮眠のときだけだった。それでも、俺は忘れない。ゆっくりと眠りに落ちてゆく意識の中で、絶えず聞こえてきたお袋のあの囁きを」
昼寝の微睡みの合間に聞いた優しい声を。
「さぞ辛かっただろう。俺はお袋の苦衷なんて全然理解できなかったから、泣いて困らせてばかりだった。歌の方はお袋自身がその母親―俺の祖母から口伝えで聞いたものらしいが、月の舟の話は、お袋が俺を宥めるために作った話だ」
俺を宥めるお袋もまた泣いていた―と、光王は沈んだ声音で呟く。
その辛そうな表情に、香花の心もまた針で刺されるようにきりきりと痛む。大好きな男がそんなに哀しんでいるのに、自分は何もしてあげられない。そのことが香花には堪らなかった。
光王は黙って頷き、重い息を吐き出す。
「俺が望み叶って、お袋に添い寝して貰えるのは、昼間、お袋が客を取らない短い間に取る仮眠のときだけだった。それでも、俺は忘れない。ゆっくりと眠りに落ちてゆく意識の中で、絶えず聞こえてきたお袋のあの囁きを」
昼寝の微睡みの合間に聞いた優しい声を。
「さぞ辛かっただろう。俺はお袋の苦衷なんて全然理解できなかったから、泣いて困らせてばかりだった。歌の方はお袋自身がその母親―俺の祖母から口伝えで聞いたものらしいが、月の舟の話は、お袋が俺を宥めるために作った話だ」
俺を宥めるお袋もまた泣いていた―と、光王は沈んだ声音で呟く。
その辛そうな表情に、香花の心もまた針で刺されるようにきりきりと痛む。大好きな男がそんなに哀しんでいるのに、自分は何もしてあげられない。そのことが香花には堪らなかった。