月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
「そういった客の中には随分と妙な奴もいたようだ。助平で我が儘な客にどんな無体を要求されても、妓生の立場では拒みきれるもんじゃない。お袋は死ぬよりも辛い夜を、俺の知らないところで過ごしてたんだ」
だからこそ、客を見送って漸く一人になれた自分の部屋で、彼女は泣いていたのだ。でも、部屋に帰っても、幼い息子がいる。彼女は声を殺し、息子に背を向けるしかなかった―。
確かに、香花には思い浮かべるのも難しいような状況だ。光王の母は、そんな苛酷すぎる日々の中で生き、それでも息子を懸命に育てようとしていたのだ。
「背中越しにお袋の泣き声を聞きながら、幾度思ったかしれない。幼心にも、一日も早く大きくなって、金を儲けて金持ちになるんだ、お袋に楽をさせてやるんだと」
光王の声がここでふっと途切れた。
「だが、お袋は死んじまった。俺一人を残して」
最後の方は、嗚咽混じりだった。
だからこそ、客を見送って漸く一人になれた自分の部屋で、彼女は泣いていたのだ。でも、部屋に帰っても、幼い息子がいる。彼女は声を殺し、息子に背を向けるしかなかった―。
確かに、香花には思い浮かべるのも難しいような状況だ。光王の母は、そんな苛酷すぎる日々の中で生き、それでも息子を懸命に育てようとしていたのだ。
「背中越しにお袋の泣き声を聞きながら、幾度思ったかしれない。幼心にも、一日も早く大きくなって、金を儲けて金持ちになるんだ、お袋に楽をさせてやるんだと」
光王の声がここでふっと途切れた。
「だが、お袋は死んじまった。俺一人を残して」
最後の方は、嗚咽混じりだった。