月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
恐らく、彼自身は意識しているわけではあるまい。だが、今、この瞬間、光王の纏う凄みのある表情は紛れもなく香花の知らない男―もう一人の〝光王〟だった。
「おかしいと思わないか? お前はそんな素振りを見せたことは一度もないが、大抵、初めて俺を見た奴は、まるで見せ物小屋の犬を見るような眼で見るよ。そりゃア、さぞかし俺の姿は奇異に映るだろう、お前だって口には出さなくとも、とっくに気付いてたはずだ。この眼、髪の色。どれ一つを取っても、生粋の朝鮮人じゃないことは明白だからな」
香花の中で、初めて彼に出逢った日の記憶が鮮やかに甦る。この世のものならぬ美しい青年の月光に照らし出された髪は黄金色に輝き、瞳は深い海のように青々としていた。あの時、あまりにも朝鮮人離れした美貌の彼を見て、〝異様人〟と口にしてしまったのだ。
その瞬間、香花の中で閃くものがあった。
「光王、あなたはもしかして、本当に」
皆までは言えなかった。
「おかしいと思わないか? お前はそんな素振りを見せたことは一度もないが、大抵、初めて俺を見た奴は、まるで見せ物小屋の犬を見るような眼で見るよ。そりゃア、さぞかし俺の姿は奇異に映るだろう、お前だって口には出さなくとも、とっくに気付いてたはずだ。この眼、髪の色。どれ一つを取っても、生粋の朝鮮人じゃないことは明白だからな」
香花の中で、初めて彼に出逢った日の記憶が鮮やかに甦る。この世のものならぬ美しい青年の月光に照らし出された髪は黄金色に輝き、瞳は深い海のように青々としていた。あの時、あまりにも朝鮮人離れした美貌の彼を見て、〝異様人〟と口にしてしまったのだ。
その瞬間、香花の中で閃くものがあった。
「光王、あなたはもしかして、本当に」
皆までは言えなかった。