月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
光王の朝鮮人にしては色素の薄い茶褐色の瞳が香花を射貫く。
陽の当たり加減によっては蒼くも見える瞳、まるで月の光を紡いだかのような金色の髪―。
光王がどこか投げやりに言う。
「俺の婆さんは、異様人だった」
予期していたとはいえ、やはり衝撃的な事実には違いなかった。
「祖国はイギリスだったか。俺もお袋に聞いたきりのことだから、正確なところは知らんがな。何でも商人の娘として何不自由なく暮らしていたのに、その親父と一緒に家族でこっち(朝鮮)に渡ってくる商船に乗ったのが運の尽きさ。舟は時化に遭い、難破して、大勢いた乗組員はすべて死んだ。むろん、俺のひい爺さんに当たるその商人もひい婆さんも死んだ。生き残ったのが、婆さん一人だったというわけだ」
その後は聞かずとも、おおよその見当はつく。多分、たった一人生き残ったその娘は朝鮮に漂着したのだろう。
陽の当たり加減によっては蒼くも見える瞳、まるで月の光を紡いだかのような金色の髪―。
光王がどこか投げやりに言う。
「俺の婆さんは、異様人だった」
予期していたとはいえ、やはり衝撃的な事実には違いなかった。
「祖国はイギリスだったか。俺もお袋に聞いたきりのことだから、正確なところは知らんがな。何でも商人の娘として何不自由なく暮らしていたのに、その親父と一緒に家族でこっち(朝鮮)に渡ってくる商船に乗ったのが運の尽きさ。舟は時化に遭い、難破して、大勢いた乗組員はすべて死んだ。むろん、俺のひい爺さんに当たるその商人もひい婆さんも死んだ。生き残ったのが、婆さん一人だったというわけだ」
その後は聞かずとも、おおよその見当はつく。多分、たった一人生き残ったその娘は朝鮮に漂着したのだろう。