月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
光王の話は続く。
都に連れてられてきた時、祖母はまだ十七歳だった。今の香花と同じ年頃だ。突如として両親の庇護を失い、一人で遠い見知らぬ異国へと放り出された彼女は、その三年後、身ごもって子を産み落とす。それが、光王の母である。
「父親の名前がはっきりしているだけ、俺はまだお袋よりは幾ばくかはマシだったな」
光王は半ば自嘲気味に言った。
祖母の生んだ女児は、その父親が誰かを特定することすらできなかった。妓生となった祖母は、その珍しい容貌が忽ちにして漢陽中の噂となり、両班たちはこぞって彼女を敵娼にしたがった。売れっ妓の彼女は、一日に数人以上の男の相手をすることも珍しくはなかったのだ。
都に連れてられてきた時、祖母はまだ十七歳だった。今の香花と同じ年頃だ。突如として両親の庇護を失い、一人で遠い見知らぬ異国へと放り出された彼女は、その三年後、身ごもって子を産み落とす。それが、光王の母である。
「父親の名前がはっきりしているだけ、俺はまだお袋よりは幾ばくかはマシだったな」
光王は半ば自嘲気味に言った。
祖母の生んだ女児は、その父親が誰かを特定することすらできなかった。妓生となった祖母は、その珍しい容貌が忽ちにして漢陽中の噂となり、両班たちはこぞって彼女を敵娼にしたがった。売れっ妓の彼女は、一日に数人以上の男の相手をすることも珍しくはなかったのだ。