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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第20章 父と子

 妓楼で生まれた妓生の娘は、当たり前のように妓生となる。光王の母もまた母同様、男たちに夜毎、身体をひらく宿命を強いられた。
 そんな中で、母は父と出逢い、恋に落ちた。そして、やがて、十七歳の時、母は懐妊する。身ごもったのが発覚した時、既に祖母はその二年前病死していた。
「異国の地で、人間らしい扱いを誰からもして貰えないまま、婆さんは死んでいった。それでも、自分の娘がどうやら両班の息子と両想いで男の方も真剣らしいと知っていて、歓んでいたそうだ。それがとんだ見かけ倒しだと疑うこともなくな。まさか、娘がその男に棄てられるとは思いもしなかったろう」
 娘の辿った酷い結末を知らずに死んだのだけがせめてもの救いだったかもな、と、光王は話を締めくくった。
「だから、俺が異様人に見えるのも当たり前といえば、当たり前なんだ。父親はこの国の人間だが、母方の婆さんは生粋の異様人だからな。つまり、俺の身体には四分の一は異様人の血が流れてる」

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