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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第20章 父と子

 しばらく香花は言葉がなかった。
 そんな香花を感情の窺えない瞳で見つめ、光王が言う。
「どうした、あまりの話に声も出ないってか? お前もやっぱり、異様人の血が流れている男は気味が悪いか? この話を聞いたら、俺に抱かれるのも嫌になっちまったか?」
「そんな風に自分のことを言うのは止めて」
 ふいに香花が振り絞るように言った。
 こんな傷ついた光王は見たくない。光王はいつも自信過剰なくらい自信に満ちていて、堂々としているのがいちばん似合っているのに。
 だが、光王に香花の切ない心は届かない。
「お前に何が判るっていうんだ? 両班のお嬢さまとして誰からも愛され慈しまれ、大切に守られてきたお前に妓房で育った俺なんかの苦労が判ってたまるか!」
「光王―」
 何か言おうとすると、怒声に押しとどめられた。

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