月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
「煩い、黙れ! もう、何も聞きたくない」
「ねえ、光王。お願いだから、あの人ともう一度だけ逢って。あの人が都に帰る前に、もう一度―」
そう、香花が光王に告げたかったのは、ただこのひと言であった。
たとえ何があろうと、血の繋がりまでは、親子の絆までは絶てないのだと。
更に、先刻、聞いたばかりの光王の話から、彼女は確信していた。光王の父が本気で彼の母を愛していたことを。
―それでも、自分の娘がどうやら両班の息子と両想いで男の方も真剣らしいと知っていて、歓んでいたそうだ。
確かに、光王はそう言った。彼の祖母に当たる女性は、娘が心から慕い合う男とめぐり逢えたことを歓んでいたのだ。親ならば、自分の辿った宿命が苛酷であればあるほど、我が子に同じ轍は踏ませたくない。
多分、光王の母は、それほど多くの客を取らされてはいなかったのだろう。それは、懐妊した時、身に宿った子が誰の種かとすぐに判ったことでも、自ずと知れる。
「ねえ、光王。お願いだから、あの人ともう一度だけ逢って。あの人が都に帰る前に、もう一度―」
そう、香花が光王に告げたかったのは、ただこのひと言であった。
たとえ何があろうと、血の繋がりまでは、親子の絆までは絶てないのだと。
更に、先刻、聞いたばかりの光王の話から、彼女は確信していた。光王の父が本気で彼の母を愛していたことを。
―それでも、自分の娘がどうやら両班の息子と両想いで男の方も真剣らしいと知っていて、歓んでいたそうだ。
確かに、光王はそう言った。彼の祖母に当たる女性は、娘が心から慕い合う男とめぐり逢えたことを歓んでいたのだ。親ならば、自分の辿った宿命が苛酷であればあるほど、我が子に同じ轍は踏ませたくない。
多分、光王の母は、それほど多くの客を取らされてはいなかったのだろう。それは、懐妊した時、身に宿った子が誰の種かとすぐに判ったことでも、自ずと知れる。