月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
彼の両親は真剣に想い合っていたか、恋愛関係に極めて近い状態にあったのだ。しかし、何らかの事情があって、男は女の許から去らざるを得なくなってしまった。
その事情というのが判れば良いのだが、と、香花は考える。むろん、事情が明らかになっからといって、光王のわだかまりが消えることはないだろう。彼の父が結果的には母を棄てたことに変わりはないのだから。
それでも、彼が当時の父親の苦衷を少しでも理解できる助けにはなるのではないか。
そのためにも、やはり、光王は父親ともう一度、きちんと逢うべきた。逢って、どんなに辛くとも、過去と対峙すべきだと思った。
「お前は馬鹿か? 俺が妓房を飛び出してからは、どんな生活をしてきたかは前に話しただろ。路上で生活しながら、掏摸やかっぱらいを重ねて、何度、大人にどやされたり追いかけられたりしたかしれやしない。その中(うち)、同じように路上生活をしていた盗っ人が見かねて、俺を拾って育ててくれた。まあ、強いて言うなら、俺にとって親父と呼べるのは、その爺さんだけだろうな」
その事情というのが判れば良いのだが、と、香花は考える。むろん、事情が明らかになっからといって、光王のわだかまりが消えることはないだろう。彼の父が結果的には母を棄てたことに変わりはないのだから。
それでも、彼が当時の父親の苦衷を少しでも理解できる助けにはなるのではないか。
そのためにも、やはり、光王は父親ともう一度、きちんと逢うべきた。逢って、どんなに辛くとも、過去と対峙すべきだと思った。
「お前は馬鹿か? 俺が妓房を飛び出してからは、どんな生活をしてきたかは前に話しただろ。路上で生活しながら、掏摸やかっぱらいを重ねて、何度、大人にどやされたり追いかけられたりしたかしれやしない。その中(うち)、同じように路上生活をしていた盗っ人が見かねて、俺を拾って育ててくれた。まあ、強いて言うなら、俺にとって親父と呼べるのは、その爺さんだけだろうな」