月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
光王を拾って育ててくれた人―というのは初耳だった。
眼を見開いて話を聞く香花を見、光王はうっすらと笑みを浮かべる。
「俺が出逢った時、もうよぼよぼの爺さんだったからな」
「その人は、それから、どうなったの?」
「死んだ」
光王はいとも呆気なく口にした。
「俺を食わせるために、酒場に食い物を盗みに入ったのが見つかって、そこの連中に袋叩きさ。寄ってたかって殴る蹴るの暴行を受けて、年寄りが保つわけねえだろ。それでも、爺さん、干からびた握り飯を懐に隠し持っててさ、息も絶え絶えになって戻ってきて、俺に〝食いな〟って震える手で差し出してきやがった」
それが最後だった―と、光王は遠い眼で語る。
眼を見開いて話を聞く香花を見、光王はうっすらと笑みを浮かべる。
「俺が出逢った時、もうよぼよぼの爺さんだったからな」
「その人は、それから、どうなったの?」
「死んだ」
光王はいとも呆気なく口にした。
「俺を食わせるために、酒場に食い物を盗みに入ったのが見つかって、そこの連中に袋叩きさ。寄ってたかって殴る蹴るの暴行を受けて、年寄りが保つわけねえだろ。それでも、爺さん、干からびた握り飯を懐に隠し持っててさ、息も絶え絶えになって戻ってきて、俺に〝食いな〟って震える手で差し出してきやがった」
それが最後だった―と、光王は遠い眼で語る。