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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第3章 陰謀

「何者か?」
 鋭い声で誰何(すいか)されるが、到底、返答などできない。
 ほどなく荒々しく扉が開き、見知らぬ男が貌を覗かせる。五十半ばほどの、がっしりとした体軀の男だ。背丈はそう高くはないが、横幅があり、随分と恰幅良く見える。赤銅色に陽灼けした貌にギョロリした黒眼、鼻の下にたくわえた髭―、一度見たら忘れられない強烈な印象を与える男である。
 政治家というよりは、猟師とでもいった方が似合いそうな男だ。
「そなた、何者だ」
 厳しい

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