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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第20章 父と子

「だが、あんたの話によると、お袋の方から、あんたを袖にしたんだろ」
 突如として発せられた光王の言葉は、香花にとっても彼の父にとっても予想外のものだったようだ。
 真悦が緩く首を振る。
「別れの科白を言わせたのは、私だ。それに、ヨンウォルが別れようと言い出した時、もっと言葉を尽くして説得していれば、彼女の気も変わったかもしれない。あの時―彼女がもうおしまいだと言った日、私はとりなすすべもなく、すごすごと引き返してしまった。あのときの私の心の中に、彼女の方から別れを切り出してくれてホッとした気持ちがどこかになかったとは言い切れない」
 その時、香花は悟った。
 光王の母は、わざと自分の方から恋人に別離を切り出したのではないか。自分がいては、真悦の前途を阻んでしまう。自分やお腹の子は、愛する人の道の妨げとなると知り、自ら身を退いたのではないか。

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