月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第21章 月下にひらく花
「なに? いきなり改まって、どうしたのよ」
茶化すように言ってから、これでは、立場が逆だと思った。いつも香花が光王に真剣な話をしようとすると、すぐに揶揄する口調ですんなりと交わされてしまうのだ。
しかし、香花の笑みにも光王は引きしめた表情を緩めることはなかった。
これはただ事ではない―と、香花は不安が波のように押し寄せてくる。
そして、その予想は図らずも当たった。
「漢陽に行こうと思う」
短く決意を告げた光王を香花は唖然として見つめた。それでも、香花は心のどこかで、こんな事態を漠然と予測していたのかもしれない。光王が父親と和解したその瞬間から、彼がいつか都への帰還を宣言するのではないかと覚悟していたような気もする。
光王は本来、優しい質の男だ。漸くめぐり逢え、理解し合えた父の懇願を無下にすることはできないだろう。
茶化すように言ってから、これでは、立場が逆だと思った。いつも香花が光王に真剣な話をしようとすると、すぐに揶揄する口調ですんなりと交わされてしまうのだ。
しかし、香花の笑みにも光王は引きしめた表情を緩めることはなかった。
これはただ事ではない―と、香花は不安が波のように押し寄せてくる。
そして、その予想は図らずも当たった。
「漢陽に行こうと思う」
短く決意を告げた光王を香花は唖然として見つめた。それでも、香花は心のどこかで、こんな事態を漠然と予測していたのかもしれない。光王が父親と和解したその瞬間から、彼がいつか都への帰還を宣言するのではないかと覚悟していたような気もする。
光王は本来、優しい質の男だ。漸くめぐり逢え、理解し合えた父の懇願を無下にすることはできないだろう。