月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第21章 月下にひらく花
ただ、まさか、そのときがこんなにも早く訪れるとは流石に想定していなかったけれど。
「親父もそろそろ五十近い。今更かもしれないが、これまで親孝行できなかった分―お袋の分まで何かしてやりたいんだ」
「それって、つまり、お父さんの望みどおり、家を継ぐってことよね」
自分でも未練だとは思ったけれど、もう一度訊ねずにはいられなかった。
香花の心中を知って知らずか、光王は淡々と頷く。
「俺の母親は妓生だから、今のままでは跡取りの座には据えられないと言われた。親父の考えでは、俺を正室の生んだ子として迎えるつもりのようだ」
父親が両班でも、母親の身分が妓生では両班にはなれない。当時の朝鮮では、父親だけでなく母親の身分も重要視された。
そのため、真悦は光王を長年、寺に入れて修業させていた正室腹の次男として届け出た上で、新たに後嗣の座に据えるつもりだと光王自身に告げたのである。
「親父もそろそろ五十近い。今更かもしれないが、これまで親孝行できなかった分―お袋の分まで何かしてやりたいんだ」
「それって、つまり、お父さんの望みどおり、家を継ぐってことよね」
自分でも未練だとは思ったけれど、もう一度訊ねずにはいられなかった。
香花の心中を知って知らずか、光王は淡々と頷く。
「俺の母親は妓生だから、今のままでは跡取りの座には据えられないと言われた。親父の考えでは、俺を正室の生んだ子として迎えるつもりのようだ」
父親が両班でも、母親の身分が妓生では両班にはなれない。当時の朝鮮では、父親だけでなく母親の身分も重要視された。
そのため、真悦は光王を長年、寺に入れて修業させていた正室腹の次男として届け出た上で、新たに後嗣の座に据えるつもりだと光王自身に告げたのである。