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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第21章 月下にひらく花

 香花はうつむき、小さく頷いた。
 怒っている光王の顔など、怖くて、とても見られたものではない。
 ややあって、光王が小さく息を吐く音が聞こえた。彼は彼で、懸命に自分を落ち着かせようとしているようだ。
「なあ、香花。もしかして、お前は俺を嫌いになったのか?」
 香花はうつむいたまま、また小さくかぶりを振る。
 うなだれた香花を光王は静かな瞳で見つめていた。
「もし、お前が俺のことを嫌いになったというのなら、俺は無理強いはしない。俺が欲しいのはお前の心で、身体だけじゃないからな。でも、そうじゃなくて何か理由があって一緒に行けないと言い張ってるのなら、本当の気持ちを教えて欲しい。たとえ、ただの小間物売りであっても、両班になっても、俺は生涯の伴侶には、香花しか考えられないんだ」

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