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　あの出来事は、いまだに香花の心のどこかに引っかかっている。まるで小さな魚の小骨が喉につかえて、いつまでも取れないような感じだ。
　肝心の光王の方は、ミリョンという名前すら、すぐには思い出せないようで、それには少し拍子抜けしてしまったけれど。
「光王が話したくないのなら、話してくれなくても良いの。でも、もし、そのことが光王にとって本当に過去の出来事になっているのなら、私にも話せる範囲で聞かせて貰えたらと思って」
　香花の言葉に、光王は小さく頷いて見せた。
「―清花(チヨンファ)」
「清花―、その女の名前なのでしょう」
　光王は無言のまま、幾度も頷く。