月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第21章 月下にひらく花
「ある日、突然、俺の前に現れ、いなくなるときも風のように呆気なく消えてしまった。いや、あの女は風などではない、鳥だったのかもしれないな。何者にもけして束縛されず、ただ愛しい男だけを想い続け、最後は男を追い求め、飛び立っていったから」
「―愛しい男って、では、その女(ひと)、清花さんには光王の他に好きな男がいたの?」
流石に、これには愕きを隠せなかった。これまで香花は、光王とその女人は相思相愛だと信じて疑っていたなかった。何らかの事情があって、二人は別れざるを得なかったのだと信じ込んでいたのだ。
「俺の他にだと?」
光王が眉を少しつり上げた。
「清花の眼に、俺は最初から映ってなんかいやしなかった」
光王の口調は、あくまでも淡々としたものだった。
「あの女の心には最初から最後まで一人の男しか棲んじゃいなかったのさ」
「―愛しい男って、では、その女(ひと)、清花さんには光王の他に好きな男がいたの?」
流石に、これには愕きを隠せなかった。これまで香花は、光王とその女人は相思相愛だと信じて疑っていたなかった。何らかの事情があって、二人は別れざるを得なかったのだと信じ込んでいたのだ。
「俺の他にだと?」
光王が眉を少しつり上げた。
「清花の眼に、俺は最初から映ってなんかいやしなかった」
光王の口調は、あくまでも淡々としたものだった。
「あの女の心には最初から最後まで一人の男しか棲んじゃいなかったのさ」