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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第21章 月下にひらく花

 光王は語った。清花は恋しい男を王に殺され、仇を討とうとしていたのだと。
「恋しい男を王に殺された―?」
 あまりにも予想外の話に、ついてゆけない。
 光王は薄く笑った。
「だよな。普通の人間には、到底、想像もつかない世界だ。清花は後宮の女官だったんだよ。そして、清花の恋い慕う男は男根を切り取った内官だった。清花は女好きの国王に見初められ、側室にと望まれたのに、断った。むろん、恋人の内官の存在があったからだ。夜伽を命じられたその夜、清花はどうしても王を受け容れられず、王の寝所から逃げ出し、その男と共に手に手を取って逃亡しようとした。その挙げ句、追っ手に捕まり、男は無惨に殺されたんだ。―清花は気を失ったままの状態で、宮殿の門前に打ち捨てられたのさ」
 〝それがすべてだ〟。光王が乾いた声で言った。

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