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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第21章 月下にひらく花

「その頃、俺はまだ〝光の王〟の頭(かしら)だった。瀕死の状態の清花を拾ってきたのは、俺の手下二人。清花が〝光の王〟に身を寄せていたのは三年ほどだったっけな。ある日突然、出てゆくと言って、あっさりといなくなっちまった。清花が出ていってから二年後に、王の死が突然、公表された。表向きは病死っていってるが、暗殺されたなんて物騒な噂も真しやかに流れていたから、存外、あいつは上手く仇討ちをやったのかもしれない」
 光王は元暗殺者らしく、怖ろしいことをさらりと言ってのける。しかし、国王暗殺は露見すれば、極刑に処せられる大逆罪である。
 香花は、眼前の男が拘わってきた闇の世界の底知れなさをかいま見たような気がした。
 もっとも、今の光王は、そんな危ない橋を渡ってきたとは思えないほど恬淡としている。
「そんなことがあっただなんて、私、全然知らなかった」

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