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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 光王を愛するようになった香花としては、少しでも愛する男の身に危険が及ぶようなことは極力避けたかったのである。仮に香花が都にいる叔母に宛てた手紙が手がかりになって、光王の居所が知られるような危険は冒せなかった。
 とはいえ、香丹は香花にとっては、この世でたった一人の肉親であった。生母を六歳で、父を十四歳で失った香花は最早、天涯孤独の身なのだ。
 香花の生まれた金氏は家門そのものはさして高くはないけれど、数代以上前から連綿と続く、れっきとした両班の家柄である。
 金家の始祖は建国当時の功臣の末席に名を連ねるほどの人物で、太祖(朝鮮王朝の創始者、初代国王)がまだ高麗の武官李成桂だった時代から、数々の戦にも付き従っている。

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