
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会
つまりは、この成家が香花にとってどのような場所であるか―けして居心地の良いものではないのを香丹はすぐに察したようだった。しかし、利口な彼女はその成家の邸内でそんなことを口にすることはなく、笑顔で帰っていった。
「そなたが心を込めてお仕えしていれば、いつか真心は必ず伝わりますよ」
と、そのひと言を残して。
成家を辞した香丹は、帰り道、輿に揺られながら涙を流していた。
成家の夫人がいかに誇り高く気の強い女人であるか、両班の間では知れ渡っている話だ。香花はけして婚家の悪口を言いはしなかったが、相当に辛く苦しい立場に立たされているのは想像に難くない。
成家ほどの名門の嫁になれたこと自体は玉の輿には相違ないが、あの女が姑では香花もさぞ気疲れするだろう。身体を損ねて寝込んでしまったりせねば良いが―、ひたすら姪の身が案じられてならなかった。
「そなたが心を込めてお仕えしていれば、いつか真心は必ず伝わりますよ」
と、そのひと言を残して。
成家を辞した香丹は、帰り道、輿に揺られながら涙を流していた。
成家の夫人がいかに誇り高く気の強い女人であるか、両班の間では知れ渡っている話だ。香花はけして婚家の悪口を言いはしなかったが、相当に辛く苦しい立場に立たされているのは想像に難くない。
成家ほどの名門の嫁になれたこと自体は玉の輿には相違ないが、あの女が姑では香花もさぞ気疲れするだろう。身体を損ねて寝込んでしまったりせねば良いが―、ひたすら姪の身が案じられてならなかった。
