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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 昨夜の出来事を思い出した途端、光王の悪戯な指の感触がまざまざと素膚に甦る。香花の身体中を丹念に辿り、火を点してゆくあの指先、乳房を這う熱い唇。思い出しただけで、胸の突起が固くなり、身体の芯にまだくすぶっている昨夜の烈しい愛撫の残り火が妖しく燃え立つ。
 私ったら、何て、はしたないことを。
 淫らな空想に耽ってしまった自分に気付き、香花は思わず頬を赤らめた。
「―花、香花!」
 鋭い一喝に、香花の意識は突如として現実に引き戻された。
「何をボウとしておるのだ。お客人に失礼ではないか」
 そこで妙鈴が意味ありげに口の端を歪める。
「夫婦仲の睦まじいのは悪いことではない。さりとて、光王どのはいまだ勉学中の身、夜はそなたが傍に侍っておれば、自ずと気も散ろう。そなたも妻たる自覚があるのならば、妓生のように男の気を引くことばかり考えず、良人が学問に専心できる環境を作るように心がけよ」

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