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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 妙鈴は吐くように言い捨て、偉そうに顎をしゃくった。
「もう、良い。そなたの顔などこれ以上見たくもない。下がれ」
 香花は妙鈴に向かって一礼をすると、彩景の方は見ようもせず部屋を出た。それが、せめてもの誇りを保つすべであった。幾ら光王から〝お人好し〟としょっちゅう揶揄されている彼女でも、これはあまりに酷い、堪えきれなかった。
 香花は廊下を歩きながら、そっと頬をつたう涙をぬぐった。成家には大勢の奉公人がいる。彼等にもまた涙を見せるわけにはゆかず、香花は与えられた室に戻るまで零れ落ちようとする涙を懸命に堪えねばならなかった。
 香花と光王の居室は庭を挟んで向かい合う位置にある。夜、寝るときには、どちらかが互いの寝室を訪ねるわけだが、大抵は昨夜のように光王の許で夜を過ごすのが常だった。

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