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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

「ああ、もう、本当に仕方のない若さまだ!」
 言ってから、自らの発した声の大きさに愕いたように飛び上がり、慌てて周囲を窺う。
 光王は薄く笑い、執事の耳許に口を寄せた。
「流石にならず者紛いの庶子は人を脅すのも上手いってか?」
 痛烈な皮肉に、執事は眼を剥いた。この反応からすると、大方、図星だったらしい。見事に心中を言い当てられ、執事は見るのも哀れに蒼くなっている。
「そなたが俺をどう思っていようが、俺にはどうでも良い。だが、これから訊くことで偽りを申せば、容赦はせぬぞ」

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