月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
早朝、まだ東の空が白み始める頃、ひそやかに部屋に戻ってきた母が声を殺して泣いている姿が今も脳裡から離れない。か細い身体を震わせ、すすり泣く母の後ろ姿は幼い彼の記憶に哀しい想い出として鮮烈に灼きつけられていた。
母の無念を漸く口にすることができたというのに、光王の心は一向に晴れなかった。今になって、口にしても、母は二度と帰らない。むしろ、自分が余計なことを口走ったことで、父への恨みも憎しみも抱かず、淡々と流れるように生きていた母の浄らかさを汚してしまったようにさえ思えてならない。
母の無念を漸く口にすることができたというのに、光王の心は一向に晴れなかった。今になって、口にしても、母は二度と帰らない。むしろ、自分が余計なことを口走ったことで、父への恨みも憎しみも抱かず、淡々と流れるように生きていた母の浄らかさを汚してしまったようにさえ思えてならない。