月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第24章 交錯する想い
この屋敷では、香花の動向が逐一、見張られている。むろん、仲好くなった使用人たちが妙鈴に注進したりするようなことはないが、妙鈴や彩景に万が一、欠伸をしているようなところを見られてしまったら、何を言われるか知れたものではない。
以前、廊下を歩いていた時、うっかり小さな欠伸を洩らしたことがあった。
丁度その時、向こうから妙鈴がやってくるのに出くわしたのだ。
―はしたない。仮にも成家の跡取りに仕える者が昼日中から大口を開けて欠伸をするとは何ですか。恥を知りなさい。手練手管を尽くして男を骨抜きにするすべはよく心得ているようだが、嗜みといったものは、どこかに置き忘れてきてしまったようだな。眠る間もないほど、何をしておったものやら。
妙鈴は香花をけして〝嫁〟とは呼ばない。
それは即ち、彼女自身が香花を成家の嫁としては認めていないからだ。
以前、廊下を歩いていた時、うっかり小さな欠伸を洩らしたことがあった。
丁度その時、向こうから妙鈴がやってくるのに出くわしたのだ。
―はしたない。仮にも成家の跡取りに仕える者が昼日中から大口を開けて欠伸をするとは何ですか。恥を知りなさい。手練手管を尽くして男を骨抜きにするすべはよく心得ているようだが、嗜みといったものは、どこかに置き忘れてきてしまったようだな。眠る間もないほど、何をしておったものやら。
妙鈴は香花をけして〝嫁〟とは呼ばない。
それは即ち、彼女自身が香花を成家の嫁としては認めていないからだ。