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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

 何か言おうとすれば、涙が零れ落ちそうになるから、黙っているだけなのに、この女は無神経に甲高い声で喋り続ける。
 こんなところ―、人を人とも思わないようなところは妙鈴そっくりだ。この二人なら、似合いの姑と嫁で上手くいくかもしれない―などと冷めた頭で考えていた。
「―ねえ、聞いてるの、お前」
 あんたなんかに、お前呼ばわりされる憶えはない。
 そう正面切って言ってやれたら、どんなにか清々するだろう。そう思い、事実、言葉が喉許まで出かけたが、香花はぐっと呑み下した。
「何でしょうか」
 辛うじて小さな声で応えると、〝あら、やっぱり聞こえてるんじゃない〟と、どこか場違いな、のんびりした声が聞こえる。

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