月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第24章 交錯する想い
もっとも、賤しい身分のお前にはその格好はお似合いだわ。しぶといというか、ふてぶてしいというか、根性だけはあるようだから、それは褒めてあげる。
去り際、彩景はそんな棄て科白を残していった。よほど、光王に亡き和真の面影を重ねているのではないかと言われたことが頭に来たのだろう。
香花自身が彩景と似た体験をしたことがあるからこそ、彼女の気持ちが理解できるのだ。かつて初恋の人崔明善を喪ってからほどなく、香花は全知勇(ジヨンシヨン)という若者と出逢った。知勇は香花が光王とつい三月(みつき)前まで暮らしていた村を初め付近一帯を治める使途(サド)(府使・地方官)の嫡男だった。
女好きで横暴で民から嫌われている父親とは異なり、温厚な人柄は皆から慕われていた。その知勇から香花は求愛を受けたのだ。知勇の孤独を宿した淋しげな瞳はどこか亡き明善を彷彿とさせ、香花は彼の人柄に惹かれるものを感じていたのは確かだ。
去り際、彩景はそんな棄て科白を残していった。よほど、光王に亡き和真の面影を重ねているのではないかと言われたことが頭に来たのだろう。
香花自身が彩景と似た体験をしたことがあるからこそ、彼女の気持ちが理解できるのだ。かつて初恋の人崔明善を喪ってからほどなく、香花は全知勇(ジヨンシヨン)という若者と出逢った。知勇は香花が光王とつい三月(みつき)前まで暮らしていた村を初め付近一帯を治める使途(サド)(府使・地方官)の嫡男だった。
女好きで横暴で民から嫌われている父親とは異なり、温厚な人柄は皆から慕われていた。その知勇から香花は求愛を受けたのだ。知勇の孤独を宿した淋しげな瞳はどこか亡き明善を彷彿とさせ、香花は彼の人柄に惹かれるものを感じていたのは確かだ。