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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

 心のどこかで思う傍ら、香花は見惚れたように蝶をうっとりと眺める。
 繊細な模様が描かれた美しい羽根が陽光に透けるようだ。蝶がひらひらと優雅に羽根を動かす度、きらきらと舞い落ちる粉が金色にきらめく。 
 蒼い蝶は香花の前をしばらく漂っていたかと思うと、ふいに井戸の中に吸い込まれるように入り込み、姿を消した。
「あっ、待って」
 香花は小さな叫び声を上げ、慌てて蝶を追いかけるように中を覗き込む。

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