月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第24章 交錯する想い
水面に映っているはずの影は最初は自分だったのに、いつしか見たこともない全くの別人になっていたのだ。その娘に一緒に行こうと誘われて―。
香花は軽い眩暈を憶え、片手で額を押さえた。
「とてもきれいな蝶を見たんです。この世のものとも思えない、幻のような蒼い蝶でした。その蝶が何だか呼んでいるような気がして、いいえ、違います、呼んでいたのは、蝶ではなく水底にいた誰かだわ」
「水底にいた誰か?」
真悦が露骨に眉を顰めた。
「この井戸に関しては、とかくの噂があることをそなたは知っているか?」
静かな声音で問いかけられ、香花は小さく頷いた。
香花は軽い眩暈を憶え、片手で額を押さえた。
「とてもきれいな蝶を見たんです。この世のものとも思えない、幻のような蒼い蝶でした。その蝶が何だか呼んでいるような気がして、いいえ、違います、呼んでいたのは、蝶ではなく水底にいた誰かだわ」
「水底にいた誰か?」
真悦が露骨に眉を顰めた。
「この井戸に関しては、とかくの噂があることをそなたは知っているか?」
静かな声音で問いかけられ、香花は小さく頷いた。