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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

 そんな妙鈴にとっては、息子だけが頼りであり、生き甲斐でもあったろう。その将来ある息子が二十五歳の若さで早世したのだ。妙鈴が必要以上に意固地になっているのも、元々きつい性格が更に烈しいものになったのも、その裏には愛する息子を喪った淋しさがあるはずだ。
 それは、理解できる。しかし、だからといって、そのやるせない感情を他人にぶつけるのは許されないし、何故、香花がこうまで辛く当たられねばならないのかと思うと、やはり、居たたまれない。
 〝仮にも成家の跡継の側妾であれば〟―、あのひと言は香花にとっては相当の衝撃であった。側妾、側妾! ちゃんとした祝言を挙げた我が身が光王の妻ではなく、妾―囲い者だというのだ。
 何の鳥か、頭上で甲高い啼き声が響き渡った。

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