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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

「どうした?」
 光王の端麗な面に翳りが落ちる。
「だから、大丈夫、何でもないってば」
「お前の食欲がないなんて、天地がひっくり返るぜ。何しろ、高熱があったって、平気で二人前平らげるようなヤツだからな、お前は」
 光王のからかいを含んだ声音に、香花はムッとした。
「なに、それ。本気で心配してくれてるのかと思ったら、また、いつものようにからかってたのね」
「違うよ。これでも、本気で心配してるんだ」
 光王は立ち上がると、香花の傍にやって来る。〝どれ〟と、手を伸ばして香花の額に触れた。
「風邪でも引いたか?」
 顔を覗き込みながら、〝熱はないようだな〟と独りごちている。
「どうせ私は騒馬ですから、風邪も引かないし、熱があっても、二人前食べられるんです!」

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