月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第3章 陰謀
〝義賊光王〟は朝鮮中の民から救世主のごとく慕われている。彼は不当なやり方で肥え太った者たちから巻き上げた金品を殆ど貧しい民に還元している。自分たちの手許に残すのは、本当に活動資金程度のものだ。
民の中には〝義賊光王〟こそが真の王であり、その名のごとくこの世を光で照らす王だと真顔で語り、光王の名を聞くやいなや、まるで仏像を拝むように、さもありがたそうに伏し拝む者までいるとか。
むろん、役人がそんな盗賊の存在を黙って見ているはずがない。光王が都に出没し始めて以来、それこそ蟻の這い出る隙間もないくらいの厳重な捜査網を張っても、光王はその労苦を嘲笑うかのように、するりと交わして逃れてしまうのだ。
光王を頭に頂く盗っ人集団〝光の王〟が総勢どれだけいるか定かではないが、光王はいつも必要最低限の人数でしか行動しなかった。だからこそ、光王が執拗な包囲網をかいくぐり、今日まで無事でいられたのだろう。
光王はまた、手練れの暗殺者としても知られている。誰かに頼まれて殺すというのではなく、光王がその者を殺す必要があると判断したのみ、彼は動く。ゆえに、都の両班の中でも民を泣かせた身に憶えのある者は常に光王の刃を怖れて暮らさねばならなかったのである。
その光王であるが、実はここ一年ほど姿を消していた。或る者はいよいよ役人の監視が厳しくなってきたため、やむなく都落ちしたとも言い、また、或る者は病死したのだとも言った。要するに、光王の存在自体が謎に包まれているのだ。
以前、偽の〝義賊光王〟を名乗る輩が出現し、都は大混乱に陥ったこともあった。結局、天下の大盗賊光王を騙った十八歳の少年は偽物であることがバレてしまった。捕らえられ、市中引き回しの上、拷問にかけられて首を刎ねられた。
民の中には〝義賊光王〟こそが真の王であり、その名のごとくこの世を光で照らす王だと真顔で語り、光王の名を聞くやいなや、まるで仏像を拝むように、さもありがたそうに伏し拝む者までいるとか。
むろん、役人がそんな盗賊の存在を黙って見ているはずがない。光王が都に出没し始めて以来、それこそ蟻の這い出る隙間もないくらいの厳重な捜査網を張っても、光王はその労苦を嘲笑うかのように、するりと交わして逃れてしまうのだ。
光王を頭に頂く盗っ人集団〝光の王〟が総勢どれだけいるか定かではないが、光王はいつも必要最低限の人数でしか行動しなかった。だからこそ、光王が執拗な包囲網をかいくぐり、今日まで無事でいられたのだろう。
光王はまた、手練れの暗殺者としても知られている。誰かに頼まれて殺すというのではなく、光王がその者を殺す必要があると判断したのみ、彼は動く。ゆえに、都の両班の中でも民を泣かせた身に憶えのある者は常に光王の刃を怖れて暮らさねばならなかったのである。
その光王であるが、実はここ一年ほど姿を消していた。或る者はいよいよ役人の監視が厳しくなってきたため、やむなく都落ちしたとも言い、また、或る者は病死したのだとも言った。要するに、光王の存在自体が謎に包まれているのだ。
以前、偽の〝義賊光王〟を名乗る輩が出現し、都は大混乱に陥ったこともあった。結局、天下の大盗賊光王を騙った十八歳の少年は偽物であることがバレてしまった。捕らえられ、市中引き回しの上、拷問にかけられて首を刎ねられた。