月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第24章 交錯する想い
それに、少し冷静になれば、香花がそのようなことをする女ではないことくらいは判るはずだ。何より、彼自身が香花の優しさを理解しているはずなのに、咄嗟に香花に棄てられたと思い込んでしまったのは、やはり香花への烈しい恋慕と執着の裏返しだろう。
そのときの彼には、香花が彼のために身を退いたのだという考えは、欠片ほども浮かばなかった。
「どこに行った? 俺から離れて、一体、どこに行ったんだ、香花」
見つけ出してやる。必ず見つけ出して、連れ戻してやる。
「お前は俺のものだ」
光王はいつになく昏い眼で呟くと、矢も楯もたまらず飛び出していった。
そのときの彼には、香花が彼のために身を退いたのだという考えは、欠片ほども浮かばなかった。
「どこに行った? 俺から離れて、一体、どこに行ったんだ、香花」
見つけ出してやる。必ず見つけ出して、連れ戻してやる。
「お前は俺のものだ」
光王はいつになく昏い眼で呟くと、矢も楯もたまらず飛び出していった。