月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第25章 岐路(みち)
最初に訊ねた通りすがりの女は、訊くなり眉を顰め、まるで汚いものでも見るように眼を背け通り過ぎていった。誰もが似たような視線を向けたが、数人目に漸く知りたい情報を与えてくれる女に出くわしたのだ。
―あんた、まだ若いのに、可哀想にねえ。ああ、何てこった。相手の男は、どんな下衆野郎なんだい。大方、両班の放蕩息子に良いように弄ばれたんだろう?
香花の母親ほどの商家の女房ふうの女は、大仰な仕種で天を仰ぎ、小声で耳打ちした。
町外れに、あんたの探してる産婆がいるから、そこにお行き。
その産婆の許で、香花は更に苛酷な現実に向き合うことになった。
―フム、確かに身ごもっておるのう。じゃが、堕ろすのは無理じゃ。
―何故ですか? お金が足りないのですか?
―あんた、まだ若いのに、可哀想にねえ。ああ、何てこった。相手の男は、どんな下衆野郎なんだい。大方、両班の放蕩息子に良いように弄ばれたんだろう?
香花の母親ほどの商家の女房ふうの女は、大仰な仕種で天を仰ぎ、小声で耳打ちした。
町外れに、あんたの探してる産婆がいるから、そこにお行き。
その産婆の許で、香花は更に苛酷な現実に向き合うことになった。
―フム、確かに身ごもっておるのう。じゃが、堕ろすのは無理じゃ。
―何故ですか? お金が足りないのですか?