テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 村にいる時分、内職で貯めた金―有り金すべてを出した香花を前に、老婆は無情にも首を振った。
―金の問題ではない。わしのところに来る女は皆、訳ありが多くてな。いちばん多いのは妓生、それから、両班の極道息子に手籠めにされた娘、子沢山ゆえに、生みたくとも生めぬ者、それぞれじゃ。そんな輩からいちいち金を取っていては、ここに来た者たちに死ねと言っておるようなものさ。金があるなら、子殺しなぞせずとも済むからのう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ