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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 腰の曲がった老婆は、怪しげな秘術を使う魔術師のようにも見える。彼女は細い眼を更に眇め、香花の心の奥底を見透かすように言った。
―どうしても言うのなら、試してやらぬこともない。だが、腹の赤児は既に五ヵ月に入っておるぞ? 堕胎というのは、赤児がまだほんの小さい中にやらねば、母親の身体に負担がかかりすぎるのじゃ。何せ、無理に子を流すのだから。判り易くいえば、あまりにも早すぎる出産と同じ負担と危険が母胎にも伴う。ここまで子が育ってから堕ろそうとするのであれば、お前さんの生命が助かる確率は良くて、二、三分。はっきり言えば、成功するのは一分の確率じゃ。

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