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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 あの時、香花は決意したのだ。
 自分がいては、光王のためにならない、光王のゆく手の妨げになるだけだ、と。
 今は光王も頑なになっているけれど、自分という存在がいなくなれば、彩景にも改めて眼を向けるかもしれない。彩景は気が強いが、一途なところのある娘だ。光王と夫婦になれば、今度は和真のことは忘れ、良人となった光王に尽くすだろう。
 彩景と結婚することで、妙鈴の光王への心証もかなり良くなるはずだ。
 自分さえ、いなくなれば。
 すべてが上手くゆく。
 それを知りながら、このまま成家に居続けることはできない。それができるほど、香花は図太くはなかった。
 何より、愛する光王のために、自ら出てゆこうと決めたのだ。
 屋敷を抜け出すときは流石に少し勇気を要したが、幸いにも光王が別室で寝むことに納得してくれたので、やりやすかった。

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