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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

 その一部始終を女将は物陰から見守っていた。あれほど絡んでくる客は真面目に相手にせず、適当にあしらって逃げろと言い聞かせたのだが、やはり、あの娘には無理だったようだ。
 香花が無抵抗になったのを良いことに、二人の行動はどんどん度を超してゆく。ついには、香花の尻や胸に手を伸ばし、香花は悲鳴を上げている。
「いやっ、何をするの。放して」
 一人が背後から抱きすくめ膝に載せた香花の胸を、もう一人がにやつきながら触っている。
 香花の大きな瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
 昼時とて、周囲には大勢の客もいるのだが、見て見ぬふりをするどころか、〝いいぞ、やれやれ、全部脱がしちまえ〟だなどと無神経かつ無責任な暴言ではやしたてる客までいる有様だ。

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