
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第25章 岐路(みち)
誰とは名指しせずとも、光王が言いたいのが他ならぬ自分のことだとは判る。
女将はむくれる光王を見て、大いに嘆息した。
「それほど大事な女なら、どうして手放したりするのさ」
「俺が手放したわけじゃない、こいつが勝手に出ていったんだ」
その言葉に、香花は瞳を揺らす。
こいつが勝手に出ていったんだ―、その言葉は香花の心を深く抉った。
心が、泣いている。傷つき、血の涙を流している。でも、真実(ほんとう)のことは言えない、言えるはずもない。
「あんたもつくづく馬鹿だねえ」
女将の呆れたような声が、香花の意識を現実に引き戻す。
「俺のどこが馬鹿だっていうんだ?」
光王は自棄(やけ)のように言い、手を伸ばして小卓の盃を奪い取ると、一気に煽った。
女将はむくれる光王を見て、大いに嘆息した。
「それほど大事な女なら、どうして手放したりするのさ」
「俺が手放したわけじゃない、こいつが勝手に出ていったんだ」
その言葉に、香花は瞳を揺らす。
こいつが勝手に出ていったんだ―、その言葉は香花の心を深く抉った。
心が、泣いている。傷つき、血の涙を流している。でも、真実(ほんとう)のことは言えない、言えるはずもない。
「あんたもつくづく馬鹿だねえ」
女将の呆れたような声が、香花の意識を現実に引き戻す。
「俺のどこが馬鹿だっていうんだ?」
光王は自棄(やけ)のように言い、手を伸ばして小卓の盃を奪い取ると、一気に煽った。
