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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第25章 岐路(みち)

「あんたはつくづく女の気持ちってものが判ってないね。嫁いできた家でたった一人―、しかも、こんなこと言っちゃ悪いけど、あんたは奥方の本当の息子じゃなくて、奥方はあんたを憎んでる―そんな婚家に嫁にきたばかりの新妻の気持ちにもなってごらんよ。毎日が針の筵じゃないのかい。しかも、屋敷には、あんたのれっきとした許嫁まで居座ってるっていうじゃないか」
「俺が呼び入れたわけじゃない。向こうが勝手に押しかけてきたんだ」
 またも自棄のように言う光王に対して、女将は肩を竦めた。
「惚れた女が出ていったのも女の勝手なら、歓迎すべからざる女が来たのも向こうの勝手、それがあんたの言い分なのかい、光王。どうしようもない女たらしが使う言い逃れのための常套句だね」

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