月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
都の春
その日、成家には珍しい客人があった。
香花が成家に戻ってから、ひと月後のある日のことである。
黙って屋敷を抜け出し、しかも数日間に渡ってゆく方知れずとなった香花がすんなりと屋敷に迎え入れられたわけではなかった。
成家の者としての自覚なしと、妙鈴はこの際、香花を離縁するようにと光王に迫ったが、これには光王が断固として拒絶した。また、真悦も光王側に立ち、香花を庇ってくれたこともあり、今回だけは妙鈴も引き下がるしかなかった。
―香花が滞在していたというのは、光王の知人の許だというし、今回は事を荒立てずに済まそうではないか。元はといえば、若い者たちの気持ちを考えず、儂らが一方的に沈家との縁組を推し進めたのも悪かったのだ。
その日、成家には珍しい客人があった。
香花が成家に戻ってから、ひと月後のある日のことである。
黙って屋敷を抜け出し、しかも数日間に渡ってゆく方知れずとなった香花がすんなりと屋敷に迎え入れられたわけではなかった。
成家の者としての自覚なしと、妙鈴はこの際、香花を離縁するようにと光王に迫ったが、これには光王が断固として拒絶した。また、真悦も光王側に立ち、香花を庇ってくれたこともあり、今回だけは妙鈴も引き下がるしかなかった。
―香花が滞在していたというのは、光王の知人の許だというし、今回は事を荒立てずに済まそうではないか。元はといえば、若い者たちの気持ちを考えず、儂らが一方的に沈家との縁組を推し進めたのも悪かったのだ。