月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
下男と呼ぶには品の良すぎる身なりの良い若者を一人、伴に連れていた。
「これは孫でしてな、まあ、儂は弟子を取らぬ主義なので、弟子の代わりに傍に置いて雑用などをさせております」
その老翁は自ら名を〝張峻烈〟と名乗った。その名を耳にした成家の主人真悦は仰天して、慌て老人を客間に案内させた。
「都でもその人柄、博識さをつとに知られる張先生を我が家にお迎えでき、このように名誉なことはございませぬ」
「儂は天下に名の轟く変わり者ゆえ、名が知られているというのもあまり自慢にはなりません。ただの偏屈な年寄りに、たいそうな言葉、痛み入ります」
「い、いや、そんなことはございませぬ」
真悦は明らかに狼狽している。いつも泰然としている真悦がこの老人を前にすると、二十代の若者のように見える。
「これは孫でしてな、まあ、儂は弟子を取らぬ主義なので、弟子の代わりに傍に置いて雑用などをさせております」
その老翁は自ら名を〝張峻烈〟と名乗った。その名を耳にした成家の主人真悦は仰天して、慌て老人を客間に案内させた。
「都でもその人柄、博識さをつとに知られる張先生を我が家にお迎えでき、このように名誉なことはございませぬ」
「儂は天下に名の轟く変わり者ゆえ、名が知られているというのもあまり自慢にはなりません。ただの偏屈な年寄りに、たいそうな言葉、痛み入ります」
「い、いや、そんなことはございませぬ」
真悦は明らかに狼狽している。いつも泰然としている真悦がこの老人を前にすると、二十代の若者のように見える。