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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第26章 都の春

 全く悪びれる風もなく述べる老人―張峻烈は漢陽でも随一と呼び声の高い需学者であった。ただ、当人の言どおり、高名なこの先生は儒学の第一人者であるとともに、頑固一徹なことにかけても都一、いや朝鮮一と名高い。
 峻烈の学識の深さを慕い、敬愛する若者が朝鮮中から集まってきても、彼はいつも面会もせず門前払いを食わせるのが常だ。人嫌いで、よほど気に入った者でなければ親しく付き合わない。それゆえ、〝奇人〟だなどとも呼ばれている。
 この峻烈こそが、何を隠そう、天主教の信徒であり、需学者というのは、あくまでも天主教徒であることを隠すための隠れ蓑にすぎない。そのことを、香花は、かつて恋人崔明善から聞いて驚愕したものであった。
 儒教は身分の差を重んじ、この国を形作る考え方の根幹をなすものだ。その点、天主教では、人は皆、神の前では平等であると説いている。

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