月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
だからこそ、朝鮮にあっては、天主教を信ずることは厳しく戒められているのだ。まさに儒教の対極にある宗教―天主教を信じながら、それを隠すために需学者の仮面を被っている。
香花には、俄には理解しがたい話であった。
もちろん、真悦も、眼前のこの老人が熱心な信徒だと知る由もない
どこから話せば良いかと、老人がわずかに考えるそぶりを見せた。
「儂は若い時分から出不精でしてな、歳を取ってからは余計に人前に出るのが億劫になってしまいました。それが、今日、出て参ったのには相応の訳があります。この偏屈な年寄りが突然、お宅にお邪魔したのも、さる人に頼まれたからです」
「さる人とおっしゃいますと?」
真悦が踏み込むと、峻烈は見事な顎髭を撫でた。
香花には、俄には理解しがたい話であった。
もちろん、真悦も、眼前のこの老人が熱心な信徒だと知る由もない
どこから話せば良いかと、老人がわずかに考えるそぶりを見せた。
「儂は若い時分から出不精でしてな、歳を取ってからは余計に人前に出るのが億劫になってしまいました。それが、今日、出て参ったのには相応の訳があります。この偏屈な年寄りが突然、お宅にお邪魔したのも、さる人に頼まれたからです」
「さる人とおっしゃいますと?」
真悦が踏み込むと、峻烈は見事な顎髭を撫でた。