月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
「勇承には一人娘がおりましてな、儂は直接逢うたことはないが、いつも勇承からよく娘の話を聞いておりました。子煩悩の良い父親で、よく娘のことを嬉しげに語っていました。この娘がまたよくできた者で、父親の血を受け継いだものか、女ながらも学問をよくし、父を凌ぐほどの秀才でした。そのところを買われて、崔家の二人の子どもたちの家庭教師を務めたこともある」
会話の中の〝崔家〟には、真悦はすぐに思い当たった。三年近く前、国王への謀反に連座したとして処刑された人物―それが崔明善である。承旨という王に近いとされる官職にありながら、謀反を企てたとして極刑に処されたにも拘わらず、当時、明善に対する声は同情的なものが圧倒的に多かった。
というのも、明善は左議政陳荘成の謀に加わったものの、事前に彼自身が国王へ陰謀の一切を密告したのだ。
会話の中の〝崔家〟には、真悦はすぐに思い当たった。三年近く前、国王への謀反に連座したとして処刑された人物―それが崔明善である。承旨という王に近いとされる官職にありながら、謀反を企てたとして極刑に処されたにも拘わらず、当時、明善に対する声は同情的なものが圧倒的に多かった。
というのも、明善は左議政陳荘成の謀に加わったものの、事前に彼自身が国王へ陰謀の一切を密告したのだ。