花鬼(はなおに)~風の墓標~
第2章 ―序章・すべての始まり―
―序章・すべての始まり―
この世の中には、出逢わぬ方が良かったのではないか、そう思ってしまうような不幸な出逢いがあるものでございます。私がこれからお話し致すのも、まさにそんな運命(さだめ)に翻弄されたとしか言いようのないある一組の男女の物語でございます。
私の生まれ育った国に伝わる、げに哀しき恋物語、しかし、これは絵空事ではなく、真、この地であったお話にございます。ただ、私が生まれるよりもはるか以前の出来事、かく申し上げる私自身も祖母から伝え聞いた話なれば、多少の事実との食い違いは許して頂きたく存じます。
今は昔、この地で起こった一つの悲劇がございました。