テキストサイズ

花鬼(はなおに)~風の墓標~

第7章 第二部・風花(かざばな)・紅葉

 紅い色は血の色、紅葉の色。
 生きて辱めを受けるよりは、いっそのことこの剣で生命を絶てと暗黙の中に伝えた母。
 いつか自分は母から譲られたこの懐剣を使うときが来るのだろうか。熊は無意識の中に懐剣を握る手に力を込めていた。
 雨は本格的に降り始め、雨脚はいよいよ烈しくなってゆく。熊は唇をきつく噛みしめて、降りしきる雨をいつまでも眺めていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ