蜉蝣の羽化

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[作品説明]

もし手か足があなたをつまずかせるなら、切って投げ捨てよ。
片手片足でいのちに入るほうが両手両足で永遠の火に投げ込まれるよりはいい。
もし目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して投げ捨てよ。片目でいのちに入るほうが両目で火の地獄に投げ込まれるよりはいい。(マタイ18章)

2000年以上の教えは今も息づいているのだろうか?
現代において、敬虔なクリスチャンがその様な事を行なったなどと言うことは少なくとも、私の周りでは聞いたことがない。ただ、歪曲して息づいている物としては弱いものに人々は直ぐに石を投げつける。自殺もする。これは、わたしの話…

15歳の春、私は途方に暮れていた。
受験に失敗したからだ。
祖父は教育長、所謂地元の名士であり、私が一族が理事連を務める高校に入れさせたかったからだ。
勿論反発した。顔を合わせるごとに喧嘩を吹っかけるように絶対に行かねーからな!と言い続け、いつしか祖父もその話題は避け始めた。
これでやっと、友達もたくさん行く所に進学できる、と思っていたがそんな幻想は打ち砕かれ、止むを得ずその少数精鋭の高校に行くこととなった。

入学して数ヶ月後、帰宅すると酔っ払った祖父が声高に話しているのがドア越しに漏れ聞こえてきた。
「落とさせてよかったな。俺が孫を落とす様に言っておいたんだ」と、人間余りにもショックなことがあると放心状態になる、ということを体で知った。その後に湧き上がる、よく表現として使われる「はらわたが煮えくりかえる思い」と、いうものを。


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