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短編集

第11章 『北斗の男2』

修行のね、続きです。

横断歩道を無事渡ることに成功した私はね、歩いてたんです。
歩道を。
真っ直ぐ。

すぐに背の高いビルに突き当たりましてね。
入ったんです。
真っ直ぐ。
修行中の身ですからね。

そしたら綺麗な女性に小部屋に通されましてね。

中には数字とボタンが並んでました。

いわゆるエレベーターっていうやつです。

自問自答しましたよ。

…ボタンを突くしかないのか、と。

…突けば、エレベーターが上がって、途中で壊れて落ちる、と。

…これは綺麗な女性の罠か、と。


しかし、男には負けるとわかっていても飛び込まなければいけないときもある。
死中に活を見いだすことこそ修行なり!

いくぞ!


『ほあっ…っ!!』


と、覚悟を決めて人差し指で突こうとしたとき、綺麗な女性がエレベーターに滑り込んできましてね。

「当エレベーターは、自動運転となっております。次は69階に止まります」

危機一髪ですよ。

何が?

って、私がボタン突いたらエレベーター壊れて落ちるでしょ!
すぐにガタン、ヒューン、アベシッって死んじゃいますよ!
死のエレベーターですよ!

死にたくないですよ、やっぱり!


色気に惑わされてはいけない。

心の修行になりました。

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